
「TART OPTICAL(タートオプティカル)」という名前を聞いたことがあるでしょうか。1948年にアメリカ・ニューヨークで誕生したこのブランドは、ヴィンテージアイウェアの世界では今なお伝説的な存在です。そのデザインを日本の鯖江で復刻したブランドの一つが「JULIUS TART OPTICAL(ジュリアスタートオプティカル)」です。
復刻モデルの「AR(エーアール)」は、ジョニー・デップが長年愛用し、日本では俳優・賀来賢人さんも着用したことで知られる人気フレーム。日本のセレクトショップでも売り上げトップを記録するほどの人気モデルです。本コラムでは、その歴史的背景から、名称を巡る商標関係、芸能人着用情報、そして買取・査定情報まで詳しく解説します。
TART OPTICAL(タートオプティカル)の歴史
1948年、ニューヨーク出身のジュリアス・タート(Julius Tart)氏によって設立されたTART OPTICALは、戦後アメリカのアイウェアシーンを牽引したブランドのひとつです。当時のアメリカ製メガネらしい、太いアセテートフレームと独特のシェイプが特徴で、なかでも「ARNEL(アーネル)」というモデルが一世を風靡しました。
しかし1970〜80年代にブランドは活動を終了。オリジナルのARNELはそのまま「幻の名作」として長年ヴィンテージ市場でのみ流通することになります。

ここでひとつ豆知識を。実は原点のTART OPTICALは、自社ブランドだけでなく他社ブランドの製造も手がけるOEM業も行っていました。1980年代にアメリカで展開された「REGENCY EYEWEAR」も、TART OPTICALがOEM製造を担っていたブランドのひとつです。当時から高い製造力を持つメーカーだったことがうかがえます。
そしてTART®・ARNEL®・F.D.R.®といった商標は、現在アメリカの「Tart Optical Enterprises, LLC」が正式な登録商標として保有しています。ジュリアス・タート氏が引退の際にすべての権利を同社へ譲渡したとされ、同社は「他の個人・企業への譲渡やライセンスは一切ない」と公式に説明しています。
この本家Tart Optical Enterprises, Inc.の正規品にも、2011年頃から2013年にかけて日本国内で製造されていた時期があります(現在の正規品は主にイタリア製)。日本の正規代理店を通じて流通していたこの「日本製TART OPTICAL」は、当店でも数本お取り扱いした実績があり、稀に中古市場で見かけることがあります。以降で紹介する日本発の復刻ブランドとは別に、本家ブランド自体が一時期日本で作られていたケースとして押さえておくとよいでしょう。
一方で日本では、2010年代後半以降、ARNELのデザインを福井県鯖江市の匠の技で再現した複数のブランドが登場しています。次の章で、代表的なブランドをかんたんに紹介します。


ARNEL®という商標と、日本で広がる「TART OPTICAL」系ブランド
「ARNEL」を掲げるブランドが複数あるので「結局どれが本物?」と迷う方も多いはず。ポイントだけ押さえておきましょう。
米国でARNEL®・TART®の商標を正式に保有しているのはTart Optical Enterprises, LLCで、日本の各ブランドはこの商標権を継承しているわけではありません。それを踏まえたうえで、日本で「ARNELスタイル」を手がける主なブランドは次の3つです。
- JULIUS TART OPTICAL:2017年、ジュリアス・タート氏の甥リチャード・タート氏らが設立。「創業者の意志を継ぐブランド」と説明されていますが、この位置づけについては商標権者Tart Optical Enterprises, LLC側と見解が分かれており、過去に米国で商標を巡る訴訟にもなっています(詳しくは末尾の参考情報源をご覧ください)。こうした事情もあり、フラッグシップモデルは「ARNEL」ではなく「AR」の名称で展開しています。同じ製造チーム(鯖江のThe Light Co. Ltd.)が手がける姉妹ブランドに、1970年代NY発祥で2018年に日本で復刻された「SHADY CHARACTER」もあります。
- TART OPTICAL ARNEL:2017年秋、JULIUS TART OPTICALとは別会社が鯖江でスタートしたブランド。モデル名に「ARNEL」をそのまま使用していますが、こちらもARNEL®の商標権を持っているわけではありません。
- TRUE VINTAGE REVIVAL(TVR):2009年ニューヨーク発。鯖江の老舗職人一家が手がけ、「TVR Arnel」などARNELスタイルを独自に展開しています。


つまり「ARNEL」というデザインは、複数の独立したブランドがそれぞれの解釈で現代に受け継いでいるということ。「本家」を名乗る表現も見かけますが、それは各ブランドの見解として受け止めるのがよさそうです。
JULIUS TART OPTICAL「AR」の特徴
ARはオリジナルARNELの設計図と金型を用いて、福井・鯖江で現代技術によって再現したモデルです。最大の特徴は以下の3点です。
- ダイヤモンド型カシメ(リベット)丁番:フロントとテンプルをつなぐヒンジ部分にダイヤモンド形のカシメが施されており、これがオリジナルARNELを象徴するディテールです。
- 7枚丁番(7バレルヒンジ):通常のメガネでは5枚丁番が一般的なところ、ARには7枚丁番が採用されています。耐久性と開閉時のなめらかな感触が際立ちます。
- 豊富なサイズ展開:レンズサイズ42・44・46・48mm、ブリッジ幅22・24mmの組み合わせでサイズを展開。様々な顔の大きさに対応できます。
ARのサイズ詳細スペックと品番の読み方
| 品番 | サイズ | レンズ横幅 | レンズ縦幅 | ブリッジ幅 | フロント幅 |
|---|---|---|---|---|---|
| PL-009 | 42□22 | 42mm | 34mm | 22mm | 約131mm |
| PL-001 | 44□22 | 44mm | 36mm | 22mm | 約133mm |
| PL-101 | 44□24 | 44mm | 36mm | 24mm | 約135mm |
| PL-002 | 46□22 | 46mm | 38mm | 22mm | 約137mm |
| PL-102 | 46□24 | 46mm | 38mm | 24mm | 約139mm |
| PL-003 | 48□22 | 48mm | 40mm | 22mm | 約141mm |
| PL-103 | 48□24 | 48mm | 40mm | 24mm | 約144mm |
品番「PL-●○○」の読み方
ARの品番は「PL-」に続く3桁の数字にサイズ情報がそのまま埋め込まれており、慣れると品番を見るだけでサイズが即座にわかる設計になっています。
- 百の位(0 or 1)→ ブリッジ幅:「0」なら22mmブリッジ、「1」なら24mmブリッジ。たとえばPL-001は22mm、PL-101は24mm。
- 末尾の桁(1/2/3/9)→ レンズサイズ:「1」=44mm、「2」=46mm、「3」=48mm、「9」=42mm。たとえばPL-001は44mm、PL-002は46mm、PL-009は42mm。
一般的に「迷ったら46□22(PL-002)」が最もよく推奨されるサイズです。ブリッジ24mmシリーズ(PL-1○○)は22mmよりも後から追加されたサイズで、コレクターからの要望に応えて2018年秋冬シーズンから展開が始まりました。PL-009の42mmは特に顔の小さい方や、コンパクトなサイズ感を好む方向けのサイズです。
ちなみに、PL-〇〇〇はJULIUS TART OPTICALの全モデルで使用されている品番の為、上記はARに限ります。
※PL-200番台のARも存在し、別注品や限定品で見受けられます。







ARのカラー展開と品番末尾コード
ARのカラーは品番末尾のアルファベットコードで識別されます。例えば「PL-002A」の末尾「A」がBLACKを示します。以下は確認されているカラーコードの一覧です(ShaDy CharacterやNATIVE SONSなど一部の別ブランドと共通のコード体系が使われています)。
| 品番末尾コード | カラー名称 |
|---|---|
| A | BLACK |
| Ab | BLACK CRYSTAL |
| Ac | OX BLOOD RED |
| B | BLACK CLEAR FADE |
| Bb | DARK BLACK FADE |
| C | TORTOISE |
| CA | RED BROWN |
| Cb | DEEP BROWN SASA |
| Ce | CAMO SASA |
| DA | BLACK BROW |
| EA | BROWN BROW |
| F | LIGHT TORTOISE |
| G | AMBER |
| H | FRESH PINK |
| I | BLACK WOOD CLEAR |
| J | RED WOOD CLEAR |
| K | BROWN CRYSTAL II |
| L | GREY CRYSTAL II |
| LP | PINK BROW |
| M | DEMI AMBER |
| N | CLEAR CRYSTAL |
| P | BROWN GRADIENT |
| R | CHAMPAGNE |
| S | VINTAGE YELLOW |
| SO | OLIVE |
| SP | OLIVE GREEN SASA |
| T | GREY CRYSTAL BROW |
| U | BROWN CRYSTAL BROW |
| V | TOKYO TORTOISE |
| W | GREY GRADIENT |
| W2 | GREY SHADOW |
| Z | BLACK SHADOW |
価格は通常カラーが¥45,000+税、ウッドカラー(BLACK WOOD CLEAR・RED WOOD CLEARなど)が¥47,000〜48,000+税、GoldエディションのBLACK・SPカラーが¥47,000+税、Gold版のBROWN BROW・BLACK BROWなどが¥49,000+税となっています(2026年時点参考・変更の場合あり)。
なお、このカラーコード体系はShady CharacterやNATIVE SONSなど、JULIUS TART OPTICALと共通の仕様を持つ一部ブランドでも使用されています。買取査定の際にも品番からカラーが特定できるため、フレームのテンプル内側などに刻印されている品番を確認しておくと便利です。
芸能人・著名人の着用情報
ジョニー・デップとジェームス・ディーン
ARNELを世界的に有名にしたのが、俳優ジョニー・デップ(Johnny Depp)です。彼がヴィンテージのARNELを長年愛用していることは広く知られており、その着用姿がブランドの復活に大きく貢献したとも言われています。
さらに興味深いのが、ジョニー・デップが「ジェームス・ディーン(James Dean)に憧れてARNELをかけ始めた」というエピソードです。1950年代のハリウッドスターであるジェームス・ディーンも、生前にTART OPTICALのARNELを愛用していたとされています。つまり、ARNELというフレームが時代を超えて「本物のスター」たちに選ばれ続けてきたことが、このモデルの普遍的な魅力を証明しています。
賀来賢人(日本人俳優)
日本国内では、俳優の賀来賢人さんがJULIUS TART OPTICALのAR 46サイズを着用していることで知られています。賀来さんは独自のアイウェアセンスで知られており、その着用がSNSやメディアで紹介されてから、JULIUS TART OPTICALへの注目がさらに高まりました。国内のセレクトショップでは「賀来賢人さんが着用しているモデル」として紹介されることも多く、若い世代のファン層への認知拡大に貢献しています。
ARと他モデルの比較──BRYAN・FDR・T-SQUAREも
JULIUS TART OPTICALにはAR以外にも複数のモデルがあります。それぞれ異なる雰囲気を持っており、ARを「知っているけれど少し違うものが欲しい」という方にも選択肢があります。
BRYAN(ブライアン)
BRYANはウェリントン型に近い、やや角ばったシェイプを持つモデルです。ARよりもシャープで知的な印象を与え、ビジネスシーンにも合わせやすいデザインです。ARの丸みのある柔らかさとは対照的に、直線的なラインが特徴的。「ARはボリュームがありすぎる」と感じる方にも向いています。

FDR(エフディーアール)
FDRは名前の通り、アメリカ第32代大統領フランクリン・D・ルーズベルトが着用していたとされるスタイルをモチーフにしたモデルです。クラウンパント系のシェイプで、上部がフラット気味、下部がやや丸みを帯びています。歴史好き・クラシック好きのアイウェアファンから特に支持されているモデルです。なお「F.D.R.」もTart Optical Enterprises, LLCが保有する登録商標のひとつです。

T-SQUARE(ティースクエア)
スクエア系のシェイプで、ARやBRYANよりもよりモダンな印象を持つモデルです。クラシックなTART OPTICALのDNAを持ちながら、現代のスクエアトレンドにも応えたデザインとなっています。

ROUND EYE(ラウンドアイ)
真円に近いラウンドシェイプのモデル。ボストン系のARとは異なる、より丸みの強いシェイプで、クラシックなラウンドスタイルを好む方に向いています。

類似モデルについて
ARはいわゆるボスリントンと言われるレンズシェイプではありますが、様々なブランドにて似たようなアイテムが展開されているのでご紹介いたします。
MOSCOT LEMTOSH
アメリカンクラシックの象徴。丸みと無骨さが同居する不動の定番
ニューヨーク発の老舗ブランドを代表する名作。1950年代のアメリカンヴィンテージスタイルをルーツに持ち、全体的に角を落とした丸みのあるシルエットとダイヤ型のカシメ鋲が特徴です。武骨でありながら親しみやすい雰囲気を醸し出し、ヴィンテージフレームの持つ独特のニュアンスをそのまま楽しめます。

BJ CLASSIC COLLECTION BJ JAZZ
1950年代の熱気を現代に蘇らせた、ジャズセッションのような存在感
1950年代に存在した「ビル・エヴァンス」をはじめとするジャズメンたちに愛されたモデルを、日本の職人技術で忠実に復刻。絶妙なレンズシェイプと、智(目尻)に施された翼のようなカシメ飾り(羽鋲)が美しいアクセントになっています。セルロイドならではの滑らかな質感と、古き良きアメリカの薫りが魅力の一本です。

OLIVER PEOPLES Sheldrake-J
モダンで洗練された気品。スマートに掛けるクラシックボスリントン
芸術家アンディ・ウォーホルの掛けていたフレームから着想を得て作られた、オリバーピープルズのロングセラー。LEMTOSHやARに近いボスリントンシェイプでありながら、フレームのエッジを美しく磨き上げることで、知的でエレガントな印象に昇華されています。ドレススタイルやジャケットにも自然と馴染む上質さが魅力です。

EYEVAN Webb
モダンで洗練された気品。スマートに掛けるクラシックボスリントン
芸術家アンディ・ウォーホルの掛けていたフレームから着想を得て作られた、オリバーピープルズのロングセラー。LEMTOSHやARに近いボスリントンシェイプでありながら、フレームのエッジを美しく磨き上げることで、知的でエレガントな印象に昇華されています。ドレススタイルやジャケットにも自然と馴染む上質さが魅力です。

JULIUS TART OPTICALの買取について
JULIUS TART OPTICALは中古市場でも一定の需要が続いています。特に以下のような条件のフレームは買取評価が高くなりやすいです。
- AR(各サイズ・カラー):フラッグシップモデルとして需要が安定しており、コンディションのよいものは比較的高い評価が期待できます。特にBLACK、DEMI AMBERなどの定番カラーは流通需要が高い傾向にあります。
- 付属品(ケース・クリーニングクロス・ブランドカード)完備:JULIUS TART OPTICALのフレームには専用のボックス、ケース、クリーニングクロス、ブランドカードが付属します。これらが揃っているほど査定額は上がります。
- フレームのコンディション:アセテートフレームの表面の傷、レンズの傷・汚れ、ヒンジの状態が査定の大きなポイントです。
- 未使用品・デッドストック品:購入したが着用しなかったもの、または購入時の状態に近いものは査定額が高くなります。
なお当店では、JULIUS TART OPTICAL以外にも、TART OPTICAL ARNELやTRUE VINTAGE REVIVAL(TVR)といった鯖江製のARNELスタイル復刻フレーム、さらに2011〜2013年頃に日本国内で製造されていた本家「日本製TART OPTICAL」の買取査定も承っております(当店でも複数本のお取り扱い実績があります)。ブランドの見分け方に迷われる場合も、品番や刻印を確認のうえ、お気軽にご相談ください。
「使わなくなったJULIUS TART OPTICALがある」「ARを売って別のモデルに買い換えたい」という方は、ぜひ当店の買取サービスへお気軽にお問い合わせください。アイウェア買取の実績あるスタッフが、適正価格でお買取りします。
まとめ
JULIUS TART OPTICALは、1948年に誕生したTART OPTICALのデザインを、2017年に日本の鯖江の技術で復刻させたブランドです。創業者の甥・リチャード・タート氏が携わり、オリジナルの設計図と金型をもとに当時の形状・ディテールを再現した「AR」は、ジェームス・ディーン、ジョニー・デップ、そして日本では賀来賢人さんが着用したことで知られる人気フレームです。
一方で、「ARNEL」という名称そのものはアメリカのTart Optical Enterprises, LLCが登録商標として保有しており、JULIUS TART OPTICALに加え、TART OPTICAL ARNELやTRUE VINTAGE REVIVALといった日本発の複数のブランドが、それぞれ独自に鯖江でオリジナルARNELの意匠を再現しています。「どれが本物か」という単純な二択で語れるものではなく、各ブランドの成り立ちや商標を巡る経緯を理解したうえで選ぶことが、納得のいくアイウェア選び・買取査定につながります。
手放す機会があれば、ぜひ当店の買取サービスにご相談ください。
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